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一個人の感想殴り書き

私は壁になりたい。BACK COAT~裏裁判~

2018.11.27~12.2 日暮里d倉庫
BACK COAT~裏裁判~

久しぶりの1ヶ月内2現場\(^o^)/
情報解禁が10月末でシフト提出後っていうか何ならシフト出た後!なので仕事挟みながらの通い現場でした。*1

とある事件に関する裁判が行われた。
犯人に下された判決は、無罪。
納得のいかない遺族は、バックコートという組織に新たに裁判を依頼。
そして集められた新たな裁判員たちにより、裏裁判が行われる。
裏裁判には三つのルールが存在する。

一つ、裁判員は犯人含む事件に関わる人間で構成されること。
二つ、判決は死罪か無罪かの二択のみ。
三つ、判決はその場で即刻実行される。たとえ、犯人ではなくても。

生死を賭けた裁判が今、開廷される。

http://vacar.co.jp


無事終演して、映像化もされないので遠慮なくネタバレしていきます。




この物語は主人公(サク)の妹(リン)が首を吊って死んだ1年後から始まります。リンが首を吊った時に居合わせていた家庭教師。本来は止めなければいけないところを止めなかったことで有罪となる見込みでしたが、最終的に家庭教師は無罪…というのが序盤、報道の音声のみで流されます。

そしてリンの唯一の遺族であるサクは「BACK COAT」という組織に新たに裁判を依頼。そしてBACK COATによってサクとリンと関わりのあった人々が集められ、裏裁判は始まっていく…。

裁判が開廷されて最初に「家庭教師が有罪だと思う人は挙手を」と求められ、最初に手を挙げたのは家庭教師でした。それに続けて次々と手が上がる中、2人だけが手を挙げません。その2人は主人公のサクと、作品の1番最初に「俺はお前が手を上げる方に挙げる」と言っていた、サクの幼なじみのタツヤ。

家庭教師が無罪であることに納得が出来ないから開廷されたと思われていた裏裁判。しかしサクの目的はそうではなく、自分が旅行に行き不在だったリンが死んだ日に何が起きたのか、どうしてそうなったか…妹を探す為の裏裁判だったのです。





と、以降基本的には一部回想はあるものの、その裏裁判の一部始終を演じるワンシチュエーションの会話劇でした。
結論から言うとまじで虚無。とても絶賛する意味での虚無。とても精神削られる作品でした。



人の面の皮を1枚1枚捲っていく裏裁判

なんと言ってもまずはこれ。序盤は全員が淡々と裁判を執り行おうとしています。回想シーンに出てくるリンもとても子供らしく可愛い。家庭教師もひたすらに謝り続ける。でもその家庭教師の面の皮が剥がれた時、彼女は豹変しました。一本に結っていた髪を解き、水を飲み干し、ペットボトルをテーブルに叩きつける。そして「憎んでいましたから、リンさんのこと」と。そこからの回想は愛らしいリンではなく、子供らしい故の凶暴さと残酷さ(後述)を露呈します。そしてそれがひとつひとつ、ひとりひとりのこれまでの外側の面の皮を剥ぎ取っていきます。

裏裁判の参加者のうち家庭教師を含む4人がリンに苦しめられてきた人物で、4人はリンの殺害を目論みます。そしてそれに協力していたのは、参加者である裁判長と弁護士。次々と暴かれていく真実に動揺したり怒り狂ったり泣き崩れたり…。多種多様の反応がまさに人の面の皮をはぎ取ってはぎ取って見えてきた底のようで。すごく生々しかったです。タツヤくんのことは後述します。


ワイ、ほんと倉持さん好きやねん…

そんな重要なキーとなるリンを演じたのは倉持聖菜さん。瀬戸っちとは野畑、艶弐とヴァガー現場でほぼほぼ共演している女優さんです。もうほんと好きやねん…野畑の時から好きやねん…。倉持さんのお芝居がとにかく好きです。そしてこの作品でもっと好きになりました。まず序盤は本当に無邪気で可愛いお兄ちゃん大好きな妹、リンちゃん。サクにほっぺもみくちゃにされてるところはごめんサクさん、1回だけやらせて?って言いたいくらいほっぺもみくちゃにしたかった…来世で頑張ろ…(?)
それが家庭教師の暴露によって豹変します。花村さん(花屋の女性)に掴みかかり、服やサクへあげるはずだったプレゼントを投げ捨てる。配達員の結城さんが届けた荷物を「ペナルティ」と踏み潰し、頭を掴み上げて無免である弱みに漬け込む。家政婦の父の写真を破り捨て、それに抗議する家政婦の頬を思いっきり(これ毎公演ガチ)引っぱたいて「私だけお父さんの記憶が無いのに理不尽!お兄ちゃんも可哀想!だから捨てたの!」と言い放ったと思いきや、「今日の晩御飯に苦手なもの入れないでね♡」と無邪気に言う。もうその凶暴さと、それが子供ゆえの残酷さを秘めてる匙加減が大変堪らなかったです。スケアのえぴつーで「いっせいたんに扇子で殴られたい♡」とか言う私も流石にリンちゃんからのリンチは遠慮しときますレベルのガチっぷりでした。あんなに小さい華奢なお身体で…。女優さんすげえっす…。


その時の感情で動く役者達

私は今回ニートになれなかったので2日目だけ行けなかったのですが、3日目マチネで随分様子が変わっていることに気付き、ソワレで悟りました。
これ、その時によって全然違うぞと。
私は演じる側の人間ではないから詳しいわけではないけど、演出家さんによって作り方って本当に多種多様。ガッチガチに型にハメ込んでいく人。演者の要望を積極的に取り入れる人。アドリブ推奨派とアドリブ否定派。11月上旬の作品が.5だったから「そのキャラらしくあること」を求められていただけに、今作の「その場その時の感情に委ねる」という作りが本当に嬉しすぎました(;_;)♡本当に舞台はナマモノとよく言いますが、この作品はそれが顕著でした。本当にみんな全然違うの。だからこそその喜怒哀楽が毎公演観ててもビリビリ伝わってくる。その都度修正したり工夫もわかるし、こうした方がより良くなるだろうという挑戦もわかる。いつもいつもみんながその時の100%でいる。本当に見応えあったし何度観ても飽きないしもっと観たくなる。最高でした。


求:円形劇場

最初に書いた通り、この作品はワンシチュエーション。セット転換一切無し、回想シーン以外は全てその裏裁判の中での描写になります。そして先述の通りキャスト達はその中をうろうろしながらお話が進みます。奥行きのある作りだったので、ステージ後方にいるキャラにステージ前方にいるキャラが声をかけたり迫ったりすれば当然前方キャラは客席に背を向ける。ふと俯瞰的に観た時に「こんなに客席にお尻向ける舞台初めてでは…?」って思いながら推しのお尻を眺めてました(やめとけ)。公演前半時期は特にだったのですが、タツヤがサクに迫るシーンは完全に上記のパターンで、タツヤがどんな表情でサクに詰め寄っているのか、全く見えない\(^o^)/泣いてるのか?笑ってるのか?怒ってるのか?もう気になりすぎて初日死にそうでした。夏に通った「ケルベロス」という舞台が花道ががっつり迫り出した変形舞台で、座る席によって見え方が違うのでこんなフラストレーションも消化出来たけど…。もう期間中ずっと「後ろの壁になりたい」「後ろのドアからしれっと入りたい」「壁に私のこと埋め込んで欲しい」って言ってた。後半は少し直ってたけど。でもやっぱり壁になりたかった。こんな感じで。

来来世はd倉庫の壁になります(?)


タツヤくん(推し)の話

富永竜也、それが今回推しの役でした。主人公サクの友達で、幼なじみ。先述の通り「俺はお前が手を挙げる方に挙げる」「いじめられていた俺を助けてくれたから、今度は俺がお前を助ける」と冒頭で言っていたくらいにサクを信用している。
しかし私は騙されない。
過去いろんな作品観て来ましたが、推しってなんでかいつも途中で豹変したり取り憑かれたり2面性のある役率半端なかったので(思えば最近はなかったかな?)、しかもクレジットがダブルキャストながら2番手なので、そんないい男なだけで終わるわけが無い!ということで初日からかなり穿った見方をしておりました。そうすると時々表情の僅かな変容に「やはり…」って思うところがあって。そして物語の後半で全てが明らかになります。凶暴になってしまったリン。それをけしかけてしたのは(やっぱり)タツヤでした。恵まれた環境で過ごすサク、恵まれず妹を亡くしたタツヤ。タツヤはその理不尽に苦しみ、サクを自分と同じ恵まれない環境に落とし嵌めようと…。と言っても本当は初めて保育園で仲良くなったと思っていたサクに、次に再会した時に「誰?」と忘れられていたことへの悲しみが全ての始まりでした。

序盤の好青年ながらも何処か建前というか裏を感じさせる表情。妹のことを口にしたその一瞬だけ滲み出た裏の顔。弁護士の真実が露呈された時、今までの回想と違って真っ直ぐに真顔で見つめる視線。だんだん堪えきれなくてそわそわする仕草。自分以外の人間の全てが露呈されたので決を取ろうと迫るその直前に隠しきれず俯きながらも見えた笑み。タツヤの真実が暴かれる回想で、現実の時間軸から回想の時間軸に切り替える瞬間。真実が完全に暴かれていく刹那、俯いた時の口角が本当にゆっくりと弧を描いていく様の美しさ。そこからの独白のように全てを打ち明ける時の仕草でみせる異常性。周囲を嘲笑う顔。女だろうがなんだろうがはっ倒して突き飛ばしてく怖さ。弁護士やサクに諭されて混乱し、最後にもう1枚面の皮を捲った中にあった本当の姿。

…もう映像化されないからめっちゃ書いたわ!笑。もうほんと良かった!本当に丁寧に演じる人なので、影の芝居も含めて本当に楽しめました。2面性のある役に定評がありつつかなり久々で、しかもここまで重苦しい作品。それでもこの数年で培ってきたスキルで、今までの何倍も何十倍もリアルで丁寧なお芝居でした。お芝居のことで総括すると、序盤の大人びた姿と後半からの幼さの対比が凄かったです。振り幅のある役をこれまでこなして、それだけのスキルがあるからこそ。はー、本当にいつも言うけど推しててよかった。誇りです。


幸せになって欲しいから、さようなら

もうバンバンネタバレしてくけど、結局全員がそれぞれに関わり、絡まり、壊れていった。リンもその凶暴性を自分でもコントロール出来ないことを思い悩んでいた。お兄ちゃんに幸せになって欲しい、だから不幸にする人を許さない。でも本当にこれでいいのかな…でも…。そうしてリンが選んだのは「自殺」でした。つまりリンを殺そうと仕向けた人達はいたけれど、結局リンは自ら死を選んだのです。そしてリンは遺書を残しており、サクはリンが自殺だと知っていました。真実を全て知ったサクは、自らを有罪として死を選びました。やーね、その時のリンの遺書が泣ける。細かい記憶違いがあったらごめんね。

‪うちはお兄ちゃんが幸せになるために‬
‪傍を離れます。‬
‪うちが居るとお兄ちゃん‬
‪幸せになれないから。‬

‪ずっと苦しかったでしょ。‬
‪反抗してごめんね。‬
‪素直になれなくてごめんね。‬
‪言うこと聞けなくてごめんね。‬

‪全部お兄ちゃんの為だから。‬
‪大好きなお兄ちゃんをこれ以上‬
‪苦しめたくなかったから。‬
‪………こんな妹でごめんなさい。‬

今作は正直キャラに感情移入…というのはなかったんだけど、この部分だけはわかりすぎていつも泣くの堪えてました。わかりすぎる…。もう少しこの作品と出会うのが早かったら、たぶん堪えきれてなかったと思います。

あと作品の冒頭と最後でそれぞれこんなやり取りがあります。

どうして離れていく方が笑顔なの?

…それは相手に幸せになって欲しいからだと思うよ。

最後にサクは笑ってましたか?ごめんなさい、推しから目が離せなくて、あと下手ほぼ座らなかったのでわかりませんでしたそこだけ見落としてました()


カーテンコールと捌けるまで

カテコといえば一般的にキャストの挨拶があったり、ニコニコ目線もらって沸いたりっていう作品とは少し切り離されたものです。でもこの作品は大変ヘビーな作品故、カテコ拍手→キャスト一礼→捌ける→終了!という最後まで世界観を壊さないで終えていました。もう大正解。そこで素のテンションで来られてもこっちが温度差で風邪ひく。…っていうのは冗談として、この虚無の余韻が大変心地よかったです。
捌ける時に(というか入ってくる時も)なんとキャストは外(恐らくセットの搬入口)に出ていきます。ちなみに始まる時も同じく外から入ってきます。

この開いている扉の外は普通に、外。歩いてる人とか普通に見える。マチネは写真のように光が差し込み、ジュルネ*2では夕日が、ソワレは夜の冷たい風が差し込む。この演出がとても綺麗でした。そしてその現実の世界にキャストが帰っていく中で、サクとリンの手前で扉は閉ざされ、2人は外(現実)に戻らず微笑み合った後に、横の一般的な捌け口に歩いて捌けていく。最後の最後までなんとも言えない儚さと虚無を残した作品でした。

総括

最高でした
この作品は必要最低限のSEと照明とセットのみ。BGMはありません。BGMはキャストの息遣いや立てる物音だけ。それでも最初から最後までその世界観に引きずり込むキャストの演技力と気迫。もうほんと永久に観てたかったし、せめてあと1週間くらいやってほしかった。でもこれだけ短いからこそ、終演から1週間経ってなお、心が掴まれたまま離れられないんだと思います。.5ばっかりだとすぐ胸やけを起こすおたくなので、こういう作品を間に挟んで貰えるのすごく幸せです。ありがたい。はー、楽しかった…。板の上の推しisジャスティス…。
なお推しはAキャストで、Bキャストは堂本くんがタツヤを演じています。堂本くんのお芝居はマーカしか観てないけど…きっとまた違った富永竜也を演じたんだろうなぁと予想。まじでまじで仕事と現場さえなければ絶対行ったのに(:3_ヽ)_くっそくっそ



余談1 マクガワントリロジー、選べるのなら

今年は社会見学もいくつかさせてもらっていて、その中で松坂桃李さん主演の「マクガワン・トリロジー」という作品が強烈なインパクトを残していました。


もうほんと最大級の褒め言葉として狂ってる作品でした。この作品も観た後に「やばい」しか言えない語彙力ポンコツ化してしまったんだけど、ばっくこーとも終演後みんな語彙力ポンコツ化してて笑った。もちろん私も。
この作品での主人公マクガワン(松坂桃李さん)の幼さと狂気、本当にこいつやべーやつやんって思わせる演技力。いつかまた瀬戸っちもこういうイカれた役来ないかなぁとか、松坂桃李さんみたいに銀幕テレビ舞台問わず活躍する人になってほしいなぁって思いながら観ていました。そしたら半年足らずでそんな役が来た(^ω^≡^ω^)そんなばかな
あと瀬戸っちのこんな感じの役といえば2015年上演の選べるのならかな。前事務所の自社舞台なので映像化されてません。これも最初は絵に書いたような引きこもり究極のコミュ障おたくからの狂ったサイコパスからの最後はクソチャラ男っていう三変化(もちろん同一人物設定)で1人だけいい意味で浮いてた作品。この時も初見の感想第一声は「きもかった」ってくらいきもかった(伝われ)。また時を経て改めてイケメンによるイケメンらしい役だけじゃなく、振り幅のある、なんでも出来るんだよっていうところをいろんな人に知ってもらえて私も嬉しかったです。
残念ながら今作も映像化ならずでそこは悔しいですが、わりと近めなのがVシネマ 同窓会、全国のローソンでお取り寄せ可能ですので、気になる方はローソンへどうぞ!!!



余談2 大変だったよ11月

11月(+12月2日間含)は推し現場だけで

  • すけすてえぴつー(10日間16公演)
  • ばっくこーと(5日間6公演)
  • BBL上映会
  • えぴわんリリイベ

ここに加えてお花パネルを依頼分2枚と自分の1枚作成、キンブレも頼まれてた分はもう何本作ったか記憶にないし、うちわ合宿もした。先述の通り仕事も通常運転で入れていた。

もうほんとしんどかったです(:3_ヽ)_
しんどすぎて5週間のフィナーレであるリリイベ終わった瞬間に発熱して死にました(:3_ヽ)_生き返りました。

でもそれだけたくさん推しに会えて、またたっくさん推しの好きなとこ素敵なところを見つけることが出来て。本当に贅沢で幸せな1ヶ月でした♡でもお願いですから1か月前の通い現場解禁は死ぬので御容赦ください♡笑

*1:普段は情報解禁された時点で全休取るので現場中は実質ニート

*2:1日3公演の2公演目のこと。語感が面白いって友達がずっと笑ってた。